飴細工の材料
飴
主な材料の飴を適度な硬さに仕込みます。この『適度な硬さ』というのが難しく、軟らか過ぎると細工がし難く形も長く持たない。また硬すぎても早く固まり過ぎて細かいハサミを入れると割れてしまう。だから結構気を使ってその日の気温・室温を考えて仕込みます。
はじめて中東の国アブダビへ出張した際には、現地の高い気温についてはある程度分かっていても、実演する会場の室温までは情報が得られなかったので、4種類の飴を持って行き現場で混ぜて調整していました。そのため飴の重量だけで10kgオーバーでしたが、そんな大変な思いをしても、温度を合わせることが細工をする上で重要なのです。
透明の飴に仕上げる場合には、仕込みの段階で透明のままにしますが、昔ながらの真っ白い飴で作る場合には、空気にさらしていわゆる“晒し飴”という状態にするために飴を練ります。(これが結構大変です)
食紅
色の三原色(赤・青・黄色)を使って様々な色をつくります。「色はここに赤・青・黄色の三色しかありません。さて緑色の飴はどうやってつくるでしょうか?」なんて子ども達にクイズを出すと面白いです。じゃ今度はオレンジ、次は紫、なんてやるうち「この色は飴にはちょっと…」とやり過ぎたりもします。また、ときどきリクエストがありますが真っ黒というのはできません。灰色もあまりおすすめはしていません。
棒
割り箸かストロー状のプラスチックの棒。昔は葦(よし)を使っていました。
飴細工の道具
和鋏
いわゆる'握りバサミ'。少し大き目のものが手に合うので気に入って使っています。時々「そのハサミは飴細工専用のものですか?」と聞かれますが、専用のものはありません。普通の握り鋏です。ただ形や材質によって使い易いものとそうでないものはあります。和菓子の世界では“菊切り”という技法に使う柄と刃のとても長い和鋏がありますが、それはちょっと飴細工には向きません。
ある時「とても使い易いなこれ」と思い、使っていた鋏を調べてみたところ、和鋏づくりの世界では三名人と言われた多鹿貢さんという方の作ったものだということが判りました。よく見ると他の鋏と細部の形状がいくつか違い、切った時の感触や、パチンという音さえも全然違います。残念なことに今では入手困難となってしまいました。
面相筆
色に合わせて三本。飴と飴をくっ付ける芸当というか小細工用にもう一本。
木箱
指物師に作ってもらいました。飴から何から道具一式全部これに入ります。
ある時、実演に行った街で、たまたま並べて売っていた木工細工を見て「これを作っている人なら腕は確かだ」と思い、図面を書いていろいろ相談して作ってもらいました。材料の木は、お社を作るのに使った良い檜の一枚板がちょうど残っていたので、それが使われています。
ポンプ
昔は口で吹いてふくらませていましたが今はポンプです。